「決算書読める化」プロジェクト


   [キャッシュフロー計算書]




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8.連結キャッシュフロー計算書の実例

ここでは連結決算のキャッシュフロー計算書の実例を紹介します。
東証一部市場に上場している「任天堂株式会社」の2019年3月期決算の C/Fです。

【連結キャッシュ・フロー計算書】   (単位:百万円)
T. 営業活動によるキャッシュ・フロー
  税金等調整前当期純利益271,772
  減価償却費9,564
  減損損失4,622
  貸倒引当金の増減額(△は減少)44
  退職給付に係る負債の増減額(△は減少)△1,970
  受取利息及び受取配当金△14,355
  為替差損益(△は益)△3,966
  有価証券及び投資有価証券売却損益(△は益)△53
  投資有価証券評価損益(△は益)682
  持分法による投資損益(△は益)△6,949
  売上債権の増減額(△は増加) △8,416
  たな卸資産の増減額(△は増加)8,484
  仕入債務の増減額(△は減少)△51,349
  未払消費税等の増減額(△は減少)1,343
  その他 17,569
  小 計227,022
  利息及び配当金の受取額12,552
  利息の支払額△44
  法人税等の支払額 △69,000
  営業活動によるキャッシュ・フロー170,529
 
U. 投資活動によるキャッシュ・フロー
  定期預金の預入による支出△382,891
  定期預金の払戻による収入346,993
  有形及び無形固定資産の取得による支出△10,736
  有形及び無形固定資産の売却による収入△1
  有価証券及び投資有価証券の取得による支出△483,195
  有価証券及び投資有価証券の売却及び償還による収入575,643
  その他  △457
  投資活動によるキャッシュ・フロー   45,353
 
V. 財務活動によるキャッシュ・フロー
  配当金の支払額△77,980
  自己株式の取得による支出△31,038
  その他   △18
  財務活動によるキャッシュ・フロー  △109,037
 
W. 現金及び現金同等物に係る換算差額 △5,948
X. 現金及び現金同等物の増減額(△は減少)100,897
Y. 現金及び現金同等物の期首残高 484,480
Z. 現金及び現金同等物の期末残高 585,378

3区分のキャッシュフローの合計額106,845百万円のキャッシュ増加に現金及び現金同等物に係る換算差額の キャッシュ5,948百万円の減少を合計するとすると「W. 現金及び現金同等物の増減額」 100,897百万円のキャッシュ増加となり今年度では大きなキャッシュ増加があったことが わかります。これに「X. 現金及び現金同等物の期首残高」484,480百万円を加算すると 「Y. 現金及び現金同等物の期末残高」585,378百万円となります。今年度のキャッシュの増加の内訳は 営業活動で170,529百万円キャッシュを獲得し、投資活動でも45,353百万円キャッシュを回収 しているので、財務活動でキャッシュを109,037百万円支出し、換算差額で5,948百万円キャッシュの 減少があったにもかかわらず100,897百万円だけキャッシュが増加しています。
次にそれぞれの区分の内訳をみていきます。

「営業活動によるキャッシュフロー」は170,529百万円のキャッシュ増加となっています。 税引前当期純利益271,772百万円に対して営業活動によるキャッシュフローは 100,000百万円ほど少ないです。その理由をみていきましょう。
まず、小計(本業キャッシュフロー)が227,022百万円のキャッシュ増加でそれ以外が 56,492百万円のキャッシュ減少です。 「税金等調整前当期純利益」から「持分法による投資損益」までを合計すると「キャッシュ本業利益」 259,390百万円が算出できます。このうちのほとんどが税金等調整前当期純利益 271,772百万円です。12,382百万円減ってますが、ほとんどが「受取利息及び配当金」 14,355百万円のマイナスです。これは財務損益なので「小計」以下に振り替えるために減額している だけです。従って会計上の利益がほぼキャッシュの増加になっていると言えます。 次に運転資本の増加によりキャッシュが51,281百万円減少しています。これは主に仕入債務の減少による 51,349百万円のキャッシュ減少によります。 あとはその他資本の減少でキャッシュが18,912百万円増加しています。
以上の結果、小計(本業キャッシュフロー)は227,022百万円のキャッシュ増加となっています。
小計以下の財務損益は12,508百万円のキャッシュ増加、法人税等の支払いで69,000百万円の キャッシュ減少となり、最終の「営業活動によるキャッシュフロー」は170,529百万円の キャッシュ増加となっています。今期は仕入債務の減少によるキャッシュの減少が多かったようなので、 その要因を取り除けば経常的な営業活動によるキャッシュフローは200,000百万円ぐらい あるのではないかと推測されます。

「投資活動によるキャッシュフロー」は45,353百万円のキャッシュ増加となっています。
投資活動の内訳ですが、設備投資純額で10,737百万円のキャッシュ減少です。これに対して 資産運用純額で56,550百万円のキャッシュ増加です。あとは、その他で457百万円の キャッシュ減少です。有価証券及び投資有価証券の売買による差額92,448百万円のキャッシュ増加と 定期預金の預入・払戻による差額35,898百万円のキャッシュ減少が主たる内訳になりますので、 来期の設備投資計画は不明ですが、来期も「投資活動によるキャッシュフロー」で大きなキャッシュの減少は なさそうです。

「財務活動によるキャッシュフロー」は109,037百万円のキャッシュ減少となっています。
その内訳は、株主還元による支払いによる109,018百万円のキャッシュ減少とその他で18百万円の キャッシュ減少です。有利子負債のキャッシュフローがないのでおそらく無借金経営なのでしょう。 また、株主還元のウチ、配当金支払いが77,980百万円で、自己株式取得が31,038百万円と なっています。「営業活動によるキャッシュフロー」と「投資活動によるキャッシュフロー」の合計で 215,882百万円キャッシュが増加しています。ここでは前期分のデータは記載していませんが 前期も同じぐらいのキャッシュ増加となっていますので、どんどん多額のキャッシュが増えていくので今期は自己株式取得により株主還元を増やしたのかもしれません。

以上の分析によりこの会社は利益とキャッシュフローがほぼ同額であり売上が大きく減少しなければ毎年多額の 営業活動によるキャッシュフローを獲得できることがわかります。 また、設備投資による多額の資金需要はなさそうであり、かつ有利子負債の返済もないので 「営業活動によるキャッシュフロー」によりキャッシュががどんどん貯まっていく構図になっています。 この貯まったキャッシュをいかに使うかが経営課題の一つかもしれません。将来のための研究開発投資と 株主還元のバランスをいかにとるかが焦点といえるでしょう。


2020/3/1


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