「決算書読める化」プロジェクト


   [キャッシュフロー計算書]




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7.個別キャッシュフロー計算書の実例

ここでは個別決算のキャッシュフロー計算書の実例を紹介します。
ジャスダック市場に上場している「イオン九州株式会社」の2019年2月期決算の C/Fです。

【キャッシュ・フロー計算書】   (単位:百万円)
T. 営業活動によるキャッシュ・フロー
  税引前当期純利益  562
  減価償却費  4,656
  減損損失  928
  貸倒引当金の増減額(△は減少)  0
  賞与引当金の増減額(△は減少) △501
  役員業績報酬引当金の増減額(△は減少) △19
  受取利息及び受取配当金 △45
  支払利息  226
  固定資産除売却損益(△は益)  44
  受取保険金 △2,629
  災害による損失  1,125
  売上債権の増減額(△は増加) △37
  たな卸資産の増減額(△は増加)  204
  仕入債務の増減額(△は減少) △772
  預り金の増減額(△は減少)  1,714
  未収入金の増減額(△は増加)  528
  その他  △991
  小 計  4,995
  利息及び配当金の受取額 19
  利息の支払額  △222
  保険金の受取額 2,629
  災害による損失の支払額△400
  法人税等の支払額  △319
  営業活動によるキャッシュ・フロー  6,701
 
U. 投資活動によるキャッシュ・フロー
  有形固定資産の取得による支出△13,762
  有形固定資産の売却による収入 86
  差入保証金の差入による支出△33
  差入保証金の回収による収入 1,317
  預り保証金の受入による収入467
  預り保証金の返還による支出△685
  長期前払費用の取得による支出△55
  その他   △22
  投資活動によるキャッシュ・フロー   △12,686
 
V. 財務活動によるキャッシュ・フロー
  短期借入金の増減額(△は減少)7,395
  長期借入れによる収入 10,000
  長期借入金の返済による支出△11,502
  ファイナンス・リース債務の返済による支出△16
  自己株式の増減額(△は増加)△0
  配当金の支払額  △188
  財務活動によるキャッシュ・フロー  5,686
 
W. 現金及び現金同等物の増減額(△は減少)  △298
X. 現金及び現金同等物の期首残高  2,736
Y. 現金及び現金同等物の期末残高  2,438

現金及び現金同等物に係る換算差額がないので、3区分のキャッシュフローの合計額△298百万円が 「W. 現金及び現金同等物の増減額」となり、この年度では大きなキャッシュフローの増減がなかったことが わかります。これに「X. 現金及び現金同等物の期首残高」を加算すると「Y. 現金及び現金同等物の期末残高」 となるので、期首に比べて298百万円だけキャッシュが減少したことがわかります。その減少の内訳は 営業活動で6,701百万円キャッシュを獲得し、財務活動でキャッシュを5,686百万円調達しましたが、 投資活動で12,686百万円キャッシュを支出したので、その結果298百万円だけキャッシュが減少しています。
次にそれぞれの区分の内訳をみていきます。

「営業活動によるキャッシュフロー」は6,701百万円のキャッシュ増加となっています。 税引前当期純利益が562百万円なのに対して営業活動によるキャッシュフローはその10倍以上 あります。その理由をみていきましょう。
まず、小計(本業キャッシュフロー)が4,995百万円のキャッシュ増加でそれ以外が 1,688百万円のキャッシュ増加です。 「税引前当期純利益」から「災害による損失」を合計すると「キャッシュ本業利益」4,347百万円 が算出できます。このうちのほとんどが減価償却費4,656百万円です。これによりこの会社は 過去に多額の設備投資をしていてその減価償却費の負担が大きいために利益はそれほど出ていませんが 毎期多額の「キャッシュ本業利益」を計上できることが予想されます
なお、「キャッシュ本業利益」のうち受取保険金は災害による損失を補填する損害保険の受取だと思われますが 本業には関係がないので「キャッシュ本業利益」からは控除して「小計」の下に振り替えています。 また、「災害による損失」のうち回復費用などの支払いは「小計」の下に振り替えられ、キャッシュを 伴わない部分は「キャッシュ本業利益」から控除されているだけです。
次に運転資本の増加によりキャッシュが605百万円減少しています。これは主に仕入債務の減少による 772百万円のキャッシュ減少によります。 あとはその他資本の減少でキャッシュが1,251百万円増加しています。これは主に預かり金の増加 による1,714百万円のキャッシュ増加によります。
以上の結果、小計(本業キャッシュフロー)は4,995百万円のキャッシュ増加となっています。
小計以下の財務損益は203百万円のキャッシュ減少、キャッシュ本業以外損益は2,229百万円のキャッシュ増加、 法人税等は319百万円のキャッシュ減少となり、最終の「営業活動によるキャッシュフロー」は6,701百万円の キャッシュ増加となっています。ただし、キャッシュ本業以外損益の内訳は「保険金の受取額」と「災害による 損失の支払額」なのでこの年度の特殊なキャッシュフローですのでこれらを除いた4,472百万円のキャッシュ増加 が経常的な営業活動によるキャッシュフローと言えるでしょう。

「投資活動によるキャッシュフロー」は12,686百万円のキャッシュ減少となっています。
「営業活動によるキャッシュフロー」は6,701百万円なので約2年分の投資となります。前期末の キャッシュ残高は2,736百万円しかないので不足分は財務活動で資金調達しています。
投資活動の内訳ですが、設備投資純額で12,392百万円のキャッシュ減少、その他で295百万円の キャッシュ減少です。ほとんど有形固定資産の取得による支出13,762百万円のキャッシュ減少によります。

「財務活動によるキャッシュフロー」は5,686百万円のキャッシュ増加となっています。
その内訳は、有利子負債の増加5,877百万円によるキャッシュ増加と株主還元による支払い 188百万円によるキャッシュ減少です。有利子負債の増加は主に前述の設備投資資金の調達のために 短期期借入金が7,395百万円増加したことによるものです。

以上の分析によりこの会社は営業活動によるキャッシュフローは健全であることがわかります。 また、設備投資のための資金調達も無理せずに行っていることがわかります。来期は短期借入金の 返済はあるものの大きな問題がなければキャッシュフローは収支トントンぐらいになり、再来期は 大きなキャッシュフローの収入が見込めるのではないでしょうか。


2020/2/23


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